鹿児島ユナイテッドFCに所属する姶良市出身のサッカー選手・吉井孝輔さん。今年1月、地元・鹿児島で現役復帰し、好調なチームの精神的支柱、そして守備の要として活躍中。試合の流れを一瞬にして変えてしまうそのプレースタイルは、ずぶとい声援を送る男性ファンが多い“玄人好み”。熊本地震後、被災地へ向け、いち早くアクションを起こしたエピソードも含め、常に上をめざす彼の背景には何があるのか──。サッカーとの出会い、両親への感謝の思いやリスペクトする人など、西姶良出身・吉井選手の素顔に迫る。
- サッカーとの出会い
- Jリーグへの挑戦
- 第2の故郷・熊本への想い
- 感謝・尊敬している人
- サッカー選手として
1.サッカーとの出会い
3つ年上の兄の影響を受け、2歳でボールを蹴り始め、小学生から中学校までは主にフォワードとしてプレー。高校ではトップ下やボランチもこなし、現在のポジションである攻撃的なディフェンダーの基礎を築いた。小学生の頃にあこがれた選手は現・名古屋グランパスエイト監督の小倉隆史氏。トリッキーなプレーや、他の選手とは違う感覚でプレーするスタイルに憧れた。
「普段はおとなしい性格で、サッカーになると年齢や学年に関係なくプレーしていましたので、先輩から生意気だとよく思われていたかもしれません」と子どもの頃を振り返る。
「実家が姶良ニュータウンの上のほうで、中学時代は坂を自転車でずっと立ちこぎをして足腰を鍛えました。高校では、相手選手に当たり負けしないフィジカル(肉体)と走り負けしない体づくりに励みました」
高校時代は部活から帰宅するのは夜9時。それから2時間、ほぼ毎日ジムに通う日々を送った。
2.Jリーグへの挑戦
高校卒業後、J2の湘南ベルマーレで3年プレー。その後、ロアッソ(ロッソ)熊本に入団し、9年間でJFLからJ2への昇格も経験。ラストシーズンにはキャプテンも務めた。2年前に一度引退し、同クラブユースのコーチに就任したが、今年1月、地元鹿児島で現役に復帰。1年間のブランクはあったものの、安定したプレーをみせている。
「今はサッカーができる幸せを改めて実感しています。選手がいかに恵まれているか、引退後、一度裏方に回ったときに気付かされました。J2昇格や指導者としての経験を、口先ではなくプレーや姿勢で示したい。試合で活躍するだけではなく、人として良い影響を与えることができる選手になりたい」
ちなみに鹿児島ユナイテッドFCでの背番号は「4」。本当はロアッソ熊本時代につけていた「22」が希望だったが、他の選手がつけていたので諦めたのだとか。
3.第2の故郷・熊本への想い
好きなサッカーができず、遊びたくても遊べない子どもを熊本地震後に見て、さらに自分が恵まれていることを痛感したという。吉井選手は震災直後、すぐに選手たちへ呼び掛け、募金活動をはじめた。
「熊本には9年間在籍していましたので思い入れもあります。サッカーを通じて人間的にも大きくしてくれた第2の故郷。自分が活躍することで力を与えたい」
鹿児島へ、熊本からわざわざ応援に駆けつけて来るほど熊本のファンたちにも未だ根強く愛されている。
現役復帰すると発表したときも励ましの言葉を熊本のファンからかけてもらい、熊本への想いは鹿児島に帰ってきた今でも強いという。
4.感謝・尊敬している人
子どもの頃からの努力が実り、Jリーガーとなった吉井選手。一番感謝しているのはやはり両親だという。
「父はサッカー経験はありませんでしたが、いつも熱心に応援してくれました。暗くなるまでリフティングの練習に付き合ってくれたり、ワールドカップなどの映像をすべて録画して、一緒にプレーの勉強をしてくれました。母は、朝早くから弁当をつくってくれて、愚痴も聞いてもらい、心の支えになってくれていました。プロ3年目で一度辞めたいと思うこともありましたが、迷わずプロの道を進むよう励まし留めてくれたこともありました。」
尊敬する人はロアッソ熊本時代に選手、そして指導者として3年間ともに過ごした北嶋秀朗氏(元日本代表/現・アルビレックス新潟ヘッドコーチ)。
「若い選手からでも学ぼうとする人。いいプレーをすると、上下に関係なく吸収しようと勉強する姿勢を近くで見て影響を受けました。試合に出ることができず、上手くいかないときにどうメンタルを維持するか。辛いときはすぐに他人のせいにして、矢印を人へ向けてしまいがちですが、まず自分を見つめることや、チームへ貢献するためにどういうふるまいをするかを学びました」
腰を負傷して試合に出場できない時期が続いたこともあった吉井選手。試合に出ることができない選手の雰囲気や士気が、チームをさらに強くする大切な要素と話す。
5.サッカー選手として
ただ、鹿児島に帰ってきてプレーするだけではなく、サッカー選手としてもっと貪欲に上を目指していきたい。
1年間、現役を退いていたことでブランクを感じるときもあるが、それも覚悟のうえでの復帰だったので言い訳にはできないと話す。
「現状に満足はしていません。
鹿児島をJ2に上げて、そしてJ1に行けたら嬉しいです。
サッカー選手としてもう一花咲かせたいと思っています。」
加入1年目にして、ベテランとしてチームを引っ張る立場の吉井選手。
チームとしても個人としても、サッカー選手としてまだまだ上を目指す決意を言葉の一つ一つから汲み取れる。
全員で戦っていると今のチームについて語る吉井選手。
常にチームへ貢献するプレーやふるまいが、若い選手たちに浸透し、それが鹿児島ユナイテッドFCの好調さにも裏付けられている。
時より強面から生まれる笑顔と、目じりのシワが人望の厚さをにじませ、若い選手からも「こうすけさん」と呼ばれ慕われる。
ちなみに、チームのために汗かき役としてピッチを駆け回る姿はどこか”玄人ウケ”し、スタンドからは黄色い声援より男性ファンからのずぶとい声援が多いのだとか。
ピッチ上で、背番号4のナイスガイに注目したい。
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