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うんべの会0

故郷に根づく昔ばなしと地域の想い手づくり紙芝居で未来へ伝える

 地域に伝わる昔話や方言を後世に残したいと紙芝居制作に取り組む「うんべの会」。市内在住の女性4人グループでこれまで「木津志の里」「重富村の半助さん」など、6作品を制作。平成29年には活動20年目の節目に、紙芝居「松原塩田」を絵本化。絵本は市内の小中学校や図書館、各施設などに約100冊を寄贈した。新聞やマスコミでも取り上げられ、地元出身者や企業などから絵本を購入したいと多くの声が寄せられた。


 うんべの会が結成される前、4人は市内の別々の小学校で活動する親子読書会に所属。旧姶良町立図書館(現在の市立中央図書館)建設当時の検討会で各読書会が集まる機会があり、絵本好きや読み聞かせへの想いなど、意気投合し交流がはじまった。子どもの小学校卒業とともに読書会を退会したが、これまでの経験を子どもたちのために生かせないかと思いを巡らせていた。そんなとき、メンバー内で鹿児島弁の絵本や紙芝居が少ないことに気づきはじめた。メンバーの半分は県外出身者で「言葉の響きに楽しさや温もりがある」と移り住んだ頃に感じた鹿児島弁の魅力を思い出した。「作品がないのなら自分たちでつくろう」と題材選びから作品制作に取り掛かった。
 

 作品は主に市内に伝わる物語を題材にしている。「方言といっしょに地域の昔話も残していきたい」とメンバーの小原さん。「いろんな話を聞けるのが楽しい」と地域行事や自治会長を通じて、物語の舞台となる地域に足を運び、そこに暮らす人たちに話を聞く。約270年前(現在の山田校区中津野の)用水路づくりの功労者である水口ゆきえを題材にした「ゆきえ」が完成した際は、地元の老人会で紙芝居を披露。地域で称え伝えてきた話が紙芝居になり、涙を流し喜ぶ姿もあったという。地域の歴史や伝統を伝える人が少なくなり、今の子どもたちの記憶や未来に残したいという気持ちが紙芝居制作の原動力になっている。


 「松原塩田」は地元の歴史を知ってもらおうと松原なぎさ小学校で読み聞かせ会を実施。「松原にこんな歴史があって誇りに思った」と子どもたちからの感想をもらった。重富中学校の今年の文化祭では、生徒たちが作品のひとつである「白銀坂」を演劇の題材に選び上演。地域と子どもたちをつなぐ活動が実を結びはじめていると実感した。


 「夫たちが良きサポーター」と舞台(紙芝居用の枠)や絵本の編集は家族の協力によるもの。作品が完成すると家族で集まり、発表会を兼ねた旅行に出かけ、紙芝居の感想や制作秘話で盛り上がることが楽しみのひとつとなっている。「ふるさとに誇りと親しみを持てるきっかけになってほしい」とこれからも地域に根づく物語に出会い、温もりのある紙芝居で伝えていきたいと4人は目を輝かせる。紙芝居は全作品中央図書館に保管され、貸出しもしている。

うんべの会松原塩田

取材した地域の人たちが登場する「松原塩田」。当時の風景がいきいきと描かれている。

うんべの会松原なぎさ小

松原なぎさ小学校での「松原塩田」の読み聞かせ会。「今の風景から想像できない」と驚く子どもたちに郷土愛を育む。

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