TOP > ストーリー > 農業と地域に新しい風第2のふるさとで挑戦する若き農家

ここから本文です。

仲野大生1

農業と地域に新しい風第2のふるさとで挑戦する若き農家

 日本ではあまり馴染みのない野菜「ルバーブ」をつくる農家が漆(蒲生)にいる。主に寒冷地で育つルバーブを独学で栽培する仲野さん。九州ではめずらしいルバーブ農家として生産に取り組んでいる。イギリスやアメリカなどで一般的に食べられている野菜で、茎の部分を食し、柑橘類や青リンゴなどに例えられる独特の香りと強い酸味が特徴。砂糖との相性がよく、ジャムやパイといった洋菓子に使用され、欧米では料理の食材としても使われる。


 仲野さんは奈良大学を卒業後、海外で働きながら語学や文化を学び、交流などを深めるワーキングホリデーに参加。「イギリスの農園で働いた体験は忘れられない」と就農につながるきっかけとなった。帰国後は、実家のある愛知県で両親が営む庭づくりの会社を手伝いながら、併設するカフェを経営。自分で育てたハーブや野菜を使用した料理やスイーツを提供しているときに、イギリスで出会ったルバーブの栽培をはじめた。温暖な土地でも栽培ができれば新鮮なものを供給できると関心が深まり、昨年2月に母の出身地である漆に移住。「地域の温かさや風土が好きで、以前から住んでみたかった」と有機栽培によるルバーブづくりに着手した。


 シベリア原産の品種のため、国内では高冷地がある長野県や北海道などが産地で、高温多湿に弱く根腐れしやすい性質がある。今年の梅雨時期には根が傷み枯れたものもあった。「温かい土地でつくる説明書がないんです」と苦笑いしながらも、水はけのよい高い畝(作物を植える土を盛り上げた所)や暑さ対策など、日々試行錯誤する。2年目から収穫に適した大きさに成長し、来年の出荷に向けて力を注ぐ。現在、試験的に収穫できたものをインターネットで販売し「鹿児島でルバーブを栽培できるんですか」とよく驚かれるという。すでに県内の洋菓子店やフランス料理店などから問い合わせがあり、新鮮なルバーブを待ち望む人は多い。
 農園は高齢化や担い手不足で耕作放棄地となった畑を借用し、地元農業を盛り上げる一助になればと考えている。ルバーブは野生動物が嫌うシュウ酸と呼ばれるアク成分を葉に含むため、鳥獣害に強く、根付けば毎年収穫できる多年草で山間地で定着しやすい農作物として注目をあびている。温暖地特有の害虫や暑さなどの課題も多いが、新たな市の特産品になれるようにさらに認知度を高めたいと話す。


 「畑の周りを裸足で走る娘を見るのがうれしい」と豊かな自然と地域が子どもたちを見守り、のびのびと成長できる環境に感謝する。校区コミュニティ協議会の夏祭りや運動会の運営にも参加し、地域づくりも農業も前向きに楽しむことを心がけている。今後は販路を広げ、イベントなどにも出店予定。「漆産ルバーブといっしょに漆の魅力も広めたい」と眼差しは熱い。

仲野大生ジャム

和名は「ショクヨウダイオウ(食用大黄)」。タデ科ダイオウ属の野菜。見た目はフキのようで、生のままでは筋が固いが加熱すると短時間で溶ける性質がある。

仲野大生ジャム2

春と秋に旬を迎え、ビタミンや食物繊維が豊富。体内の余分なナトリウムの排出を促すカリウムも多く含まれ、高血圧など生活習慣病の予防によいとされている。(写真はルバーブのジャム)

ページの先頭へ戻る