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手を取り合い同じ想いで

不安や葛藤を少しでもやわらげられたら。
昨今、耳にすることが多くなった〝ヤングケアラー〟という言葉。家族の介護が必要な場合に、本来大人が担うような家事や家族の世話、介護などのサポートをする18歳未満の子どもの呼称である。
本市でヤングケアラーをはじめ、仕事と介護を両立する〝ビジネスケアラー〟など様々な〝ケアラー〟の支援に取り組む、有村繁樹さん。本業はケアマネージャー(介護支援専門員)で、介護を必要とする方がへルパーやデイサービスなどの介護保険サービスを受けるために必須となる〝ケアプラン〟の作成や介護事業者との調整などを担っている。ケアマネージャーとしての業務の傍ら、家族の介護をしている方、いわゆるケアラーのサポートにも尽力する。
今年、結成30周年を迎えた在宅障害者親の会「いちごくらぶ」。平成6年に旧姶良町に住む障がいを持つ子どもの母親3人により立ち上げられた。「3人だけでもいいから始めてみようよ」という一声から始まったこの親の会が今では多くの人々の心の支えになっている。
「余命半年から2年の命――」。現代表の有木さんの長女、真帆ちゃんは生後1か月で脳のしわが少ない難病・滑脳症と診断され〝長くて2年〟と余命を宣告された。有木さんにとって始めての育児に奮闘する毎日だった。真帆ちゃんが入退院を繰り返していたある日のこと。隣のベットで入院するお子さんのお母さん、同会前代表の福岡さんに出会った。「福岡さんと話すと心がすーっと穏やかになって、パワーをもらえるんです」と有木さんは当時のことを話す。いちごくらぶの存在は知っていたが病院に掲示されている手書きの新聞を読むくらいだった。同会に参加したのは真帆ちゃんが小学2年生の頃から。「1人じゃない。大丈夫よ」と支えてくれる周りの方がなくてはならない存在になっていた。「この会を無くしたくない」と同会が発足して15年目に有木さんは代表としての歩みをスタートさせた。もちろん不安もあったものの先輩方が築き上げたこの会を存続させたいとの熱い想いが背中を押した。

有木さんの手書きの新聞。
会員の子どもの障がいはさまざま。歩行や会話は難しく、全介助が必要な子どもがほとんどである。会員は県内各地の医療関係者やボランティアの賛助会員を含め約70人が所属している。毎月発行している新聞はすべて有木さんの手書きで発行数は通算290号に上り、親子の近況や活動内容の報告、耳よりな情報などを掲載。活動は月に一度で理学療法士による親子発達相談や音楽療法、ミニ夏祭りやクリスマス会を開催。子どもたちに色々な経験をしてほしいとリズム遊びや脳トレ、感覚遊びなど親子で一緒に取組む活動が多い。親子が負担にならないように出欠は取らず自由に参加できるようにしている。親子でリラックスできる特別なひとときとなっている。「何も言わなくてもそっと手を差し伸べてくれる。みんなが分かってくれるだけで安心するんです」と活動への想いを話す。
有木さんは介護のプロをめざしたいと介護福祉士と社会福祉士の資格を取得。自身のスキルも磨き、周囲へ還元する。目標は同会50周年。「長く続けられるようにその時に一緒にできることをやっていきたいですね」と笑顔を見せる有木さんは今日もいちごくらぶのみんなの心に寄り添い共に歩む。

月に1度の活動の様子。8月はピアノクラブの今村先生による音楽療法。合唱や楽器の演奏を楽しむ。