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届けたい想い、絵筆にのせて

姶良人No.118

豊かな発想力と巧みな技術で紡ぎ出す物語

 大学生の頃、料理をしようときのこを手に取った瞬間カサの部分がぽろっと外れた。その時、カサがないきのこを眺めて「こんな風にきのこたちも帽子(カサ)を他のものに取り替えておしゃれをしたらかわいいだろうな」と空想が膨らんだという。これが、物語の主人公・きのこの〝ベニー〞誕生のきっかけだった。登場キャラクターのかわいらしい表情と細かい部分まで丁寧に描き込まれた背景は、見る者を一瞬で絵本の世界へと惹き込む。そんな塩満さんの作品「ベニーのみずたまぼうし」は、絵本作家の登竜門「MOE創作絵本グランプリ」でグランプリを獲得。絵本作家への第一歩を歩みはじめた。
 「幼い頃は、チラシの裏に落書きをしてよく遊んでいました。絵本は母がしてくれる読み聞かせも、自分で図書館に行って選ぶことも大好きでした」と幼少期を振り返る。絵を描くこと、そして絵本は常に塩満さんのそばにあった。〝いつか自分で絵本を
作ってみたい――。〞そんな夢を当時から持っていた塩満さん。中学校で美術部に入るとさらに絵の世界に魅了され、高校は松陽高校の美術科で油絵を専攻。文化祭では初めての絵本制作にも挑戦した。「想像以上に難しくて、力不足を痛感しました」そう話す塩満さん。しかしその悔しさは夢への情熱をさらに加速させた。絵本や漫画の研究室もある筑波大学に進学し、油絵を専門的に学びながら絵本制作にも精力的に取組んだ。そして大学3年の時に応募した絵本のコンクールで優秀賞を受賞。これを機に小学館が発行する幼児雑誌で挿絵を担当するなど、幼い頃からの夢の実現に向けて経験と実績を積んだ。「絵をじっくり楽しんでもらえる〝魅せる〞絵本があなたなら作れるはず」恩師のことばが自らの背中を押してくれたと話す。大学院修了後、帰郷。交流のある編集者からの「子どもと関わった方が子どもの心に届く絵本が描けるはず」というアドバイスもあり、牧之原養護学校で2年間勤務。現在は福山高校の美術の非常勤講師と蒲生小の支援員をしながら創作活動を続ける。「子どもたちの絵本との関わり方や、ページごとの反応など、日々面白い発見があります」とほほ笑む。
 今年の秋に絵本を出版し、いよいよ絵本作家としてのスタートを切る塩満さん。「ずっと応援してくれている家族や友人、恩師に喜んでもらえたのが何よりの幸せ。たくさんの方に愛される絵本を作り続けたいです」と穏やかに語る。塩満さんの絵筆か
ら生まれる物語は、これから先たくさんの世界を私たちに魅せてくれることだろう。

ベニーのみずたまぼうし

「ベニーのみずたまぼうし」の1ページ。

ベニーのみずたまぼうし2

確かな画力とおしゃれな感性が高く評価された。

油絵作品

油絵作品「実りますように」。油絵の技法が塩満さんの絵本の特徴でもある。

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