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“完全粘勝”で果たした44年ぶりの花園出場

姶良人238号

“仲間とぶつかり合い切磋琢磨してきたことが私たちの強み”

 白波スタジアムに試合終了を知らせる〝ノーサイド〟の笛が響き渡る   。県大会決勝で鹿児島工業高校と熱闘を繰り広げた加治木工業高校のラグビー部が花園予選を制し優勝を決めた瞬間だった。実に44年ぶり4度目の優勝。グラウンド内では沸き起こる喜びにはじける笑顔と涙が輝いた。
 ロースコアで進んだ決勝は2点差で最終局面を迎えた。リードするのは加治木工業。1トライ(ゴール)で5点、コンバージョンキック(トライ後のゴールキック)で2点が入るラグビーにおいて2点差は油断できない点差だ。鹿児島工業の最後をかけた闘志あふれる猛攻に、何度もゴールライン直前まで攻められるも加治木工業は気迫で押し返す。スタンドではチームカラーの赤色をまとった応援団が「完全粘勝」と印字された真っ赤なフラグを掲げて「耐えろー!粘れー!」と選手の背中を押す。日頃の練習の中で磨きをかけてきた「ディフェンス力」がここぞの場面でも発揮され、見事最後まで守り抜き勝利を手にした。
 優勝までの道のりは決して平坦なものではなかった。遡ること半年前の今春、長年チームを牽引してきた細樅前監督が異動となり、塩向現監督が着任。新チームとしての歩みがスタートしたが、選手らは前監督と新監督のラグビースタイルのギャップに戸惑い、ぶつかることも。しかし、選手も監督もラグビーへのひたむきな思いを持っているからこその衝突は、チームの絆をより強くするきっかけとなった。「ぶつかりながらも粘り強く私たちとずっと向き合ってくれたおかげです」飯野主将は選手と監督が一体となるまでの軌跡を振り返る。前監督が選手に徹底させた「低く刺さるタックル」に加え、塩向監督は1人目で相手を捉え、2人目で完全に止める「ダブルタックル」をチームにプラス。ディフェンス力を一層強化させた。チームの底力をさらに押し上げたのが選手たちのウェイトアップだ。マネージャーたちが練習後に手づくりのおにぎりをふるまい、選手たちの強い体づくりをサポートした。
 今年7月以降コロナ禍や選手のケガといった障壁も立ちはだかり、今大会の初戦に至るまで選手が揃っての試合は一度もできなかった。「それでも試合の中の攻防で負ける気はしなかった」と選手に厚い信頼を寄せる塩向監督。花園の舞台に選手たちと立てる喜びに、「本当に感謝ですね」と胸の内を明かした。選手たちは「花園では一戦一戦を大事にしていきたい」と高みをめざす。ラグビーの聖地花園での彼らの活躍に期待が高まる。

20221215姶良人②

県大会決勝の対・鹿児島工業戦でダブルタックルを駆使した鉄壁の守りを見せる。

20221215姶良人③

試合前に円陣を組み、「がんばろーぜ」と掛け声を合わせ、心ひとつにチームの士気を高める。

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