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突き動かすのは飽くなき向上心

姶良人NO.114

“畜産は、ゴールがないからこそ面白い”

 その姿を一目見たとき、「この子しかいない。この子となら全共の舞台をめざせる」そう直感した。みか号との出会いはまるで運命のようだったと福﨑さんは振り返る。その直感を信じて向き合い続けたこれまでの日々――。直感は現実となった。
 幼い頃から実家で牛を飼っていて、一人っ子だった福﨑さんにとって牛は遊び相手でもあり、彼らの世話をするのが当たり前だった。時は流れ福﨑さんは旧姶良町役場に就職。仕事をする傍ら、牛を愛する気持ちは尽きることはなかった。毎朝4時に起床して実家の牛の世話をしてから出勤。仕事が終わると牛舎に戻って世話をする生活を送った。「きついと思ったことは一度もない。ただ牛が大好きで、その時間が楽しかったんです」福﨑さんはそう言ってお茶目に笑う。当時から定年後は畜産業を営むつもりだった。しかし次第に畜産の夢は膨らみ、「今しかない」と54歳で早期退職。畜産農家としての歩みをスタートさせた。もちろん不安もあったものの「あなたの人生なのだから、あなたの手で切り拓いて」という妻・ルリ子さんの声が背中を押した。
 全共は牛飼いなら誰もが憧れる5年に一度の夢舞台。その代表牛に選ばれるというのは非常に狭き門だ。一日一日の管理の積み重ねが結果に現れるため、県代表に決まってからはさらに厳しい管理が求められた。「全共出場は自分一人の力ではない。JAや行政などたくさんの方の協力のおかげ」と、周囲の支えに感謝する。「後継者の育成こそが畜産振興」をモットーにする福﨑さんは、夢見ていた全共の大舞台での引手という重役を市畜産係の西園主査に託した。「全共という貴重な経験を積むことは、彼にとって大きな財産になる。彼にみか号を任せて本当に良かった」審査終了後、二人は固い握手を交わしたという。優等賞3席という結果には「次の全共に向けて頑張らないといけない理由ができちゃったね」と、その瞳は既に5年後の次回大会を見据えている。「ここまで頑張って来られたのは支えてくれたスタッフのおかげ。私は彼らに最高賞をあげたい」彼らの手厚いサポートだけでなく、存在そのものが頑張る原動力になったと話す。
 牛に魅せられて69年。挫折しそうになった時も「やるしかない」と自らを奮い立たせて踏ん張ってきたという福﨑さん。全共に本市から初出場を果たし、かつてルリ子さんから掛けられた言葉の通り、まさしく新たな道を自らの手で切り拓き続けている。その姿は若き畜産農家たちにとっての道しるべになっていくことだろう。

上位入賞牛パレード

全共最終日の上位入賞牛パレードでは、みか号と福﨑さん、西園主査で拍手に応えた。

ブラッシング

リラックスした様子でブラッシングされるみか号。これも福﨑さんとの信頼関係があってこそ。

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