TOP > ストーリー > 菓子に込める郷土の魅力

ここから本文です。

菓子に込める郷土の魅力

20220615airazin

“はだか麦スイーツ”型にはまらない模索の先に――。

 5月、畑一面を黄金色に染めるはだか麦。大麦の一種で殻がむけやすいことからこの名で呼ばれ、県内では本市が生産量1位を誇る農産物となっている。はだか麦を原料に製造される麦味噌や麦焼酎はふるさと納税の返礼品にもラインナップされ、県内外の消費者に楽しまれている。菓子工房「あいらぼ」ではスイーツに使用。素材の特長を活かした確かな味に人気が集まっている。

20220615-1

 東さんが開発したはだか麦ぼうろは農業(生産者)、福祉(製造者)、商工業(販売者)が一体となって商品化した「農福商工連携」の事例として注目された。業種の垣根を越えた連携でもっと元気な地域にしたいと将来にも目を向ける。キャリアがゼロから始まったあいらぼの活躍に注目した市商工会からオファーがあり、起業家セミナーでも講師を務める東さん。「周りに頼もしい仲間がいたからです」と謙遜するもスイーツの人気には強い探求心と地道な努力の裏付けがある。

 かわいらしいコンテナハウスのキッチンで甘い香りに包まれながら作業をするあいらぼの東明美さんは、ふくれがしや台湾カステラ、グラノーラなどを製造。「素人だから試行錯誤を日々重ねています」と実は、はだか麦を使ったスイーツ作りをはじめたのは昨年の話。それまで市商工会に勤務していた東さんは市産はだか麦を使って製造販売する商工会員を探す側だった。しかし、かねてから姶良市をPRしたいと考えていたこともあり自ら試作を重ね現在、就労支援施設で商品化されている〝はだか麦ぼうろ〟のレシピを完成させた。その手ごたえに起業することを決意。調理・加工の基礎を学ぶため職業訓練校に入校した。「経験が浅いから何をするにもチャレンジなんです」とにこやかに話すが〝美味しい〟を徹底的に追求する姿勢と熱意はまさにプロフェッショナルだ。半年間の訓練修了後、起業。屋号は姶良とラボラトリー(研究所)を略して「あいらぼ」に決めた。

20220615-2

 あいらぼのはだか麦スイーツはくすくす館やJAファーム重富店、Aコープ国分店で手に取ることができる。
 SNSを通じて個別の注文もある。記念品やイベントに合わせオーダーに応える。写真は砂糖と卵白でデコレーションしたアイシングクッキー」

 「姶良市の特産品と言えば――。の選択肢のひとつになれたらうれしい」と市産はだか麦を原料としたスイーツ作りへのこだわりは強い。粉としての使用はもちろん麦麹や麦茶、ときには炒ってそのまま使うなど、素材の魅力を引き出す手法と発想を広げスイーツと結びつける。「独自の配合、自由な製法でベストを探すのが楽しみのひとつです」と東さん。むぎふくれ(ふくれがし)にはなんと醤油に付け込んだ麦麹が配合されていて、ほのかな甘味を生み出すだけでなく、生地を膨らませる重曹の苦みを抑え、しっとりとした食感を2週間程度持続させるのに役立っているのだという。
 「老舗に歴史で勝ることはできない。実際に食べてくれた人の声を取り入れながら20年先、30年先も仕事を楽しんでいたいです」東さんはSNS(インスタグラム)を活用し情報の発信、収集に余念がない。王道のレシピにとらわれず時代とニーズに合わせて、はだか麦スイーツは今日も進化を続ける。

ページの先頭へ戻る