TOP > ストーリー > 幸せ届けるまちの餅屋

ここから本文です。

幸せ届けるまちの餅屋

20220415mine

炭火で焼かれる醤油餅

 新鮮な季節野菜、地元ならではの加工品や工芸品などが販売され、買い物を楽しむ客で連日盛況の蒲生町物産館くすくす館。その敷地の一角から醤油の焦げる香ばしい香りがする。ドラム缶に焚いた炭火で、表面をパリッと焼かれた餅が割れ、隙間からまた膨らむ。壺の醤油に一度くぐらせて再び炭火にかけると、食欲をそそる空気があたりに広がり思わず生唾を飲み込んでしまいそうになる。醤油餅を販売するのはちろす家代表髙山信一郎さん。「お客さんとのご縁をいただけることが何よりうれしいですね」と朗らかな笑顔が印象的。一つひとつ丁寧に焼かれた餅はシンプルながらキメの細かいなめらかな餅と独自配合のあわせ醤油が絶妙にマッチした特別な味だ。

matimoti01

 香ばしい醤油の香りが食欲をそそる。餅の焼きあがりが待ち遠しくなる。

 「老舗の餅屋だと思っていらっしゃるお客さんもよくいます。なかなか餅屋ってないですからね」と話す髙山さんがちろす家を立ち上げたのは8年前のこと。漠然とではあったものの、もち米の生産から加工、販売まで一貫して行う、いわゆる6次産業のイメージをもっていた。自身の名前”しんいちろう”と家族の”家”からとった屋号のとおり家族経営が「ちろす家スタイル」。農作業も加工も家族一丸で取り組み、年間約250俵(およそ7・5トン)分の餅を製造。店頭販売の醤油餅のほか、市内外の販売店7店舗で丸餅やあんこ餅、この時期はよもぎ餅などを販売している。

yomogimoti

主力商品のあんこ餅。あんこは北海道産のあずきを使い程よい甘さに仕上げる。香り高いヨモギ餅とのコラボはこの時期限定。

つながるご縁に感謝を込めて――。

 古くから「餅」は正月の鏡餅や一歳祝いの一升餅、桃の節句の菱餅など日本人の生活、行事、慶事に欠かせない食べ物とされ、髙山さんのもとにも上棟式や節句など晴れの日を祝う餅の注文が遠くは関東からも寄せられるという。「自分の作った餅がお客さんの幸せな時間の中にあると思うとたまらなく嬉しくなります。こんないい仕事はない」と夜間や早朝に作業する個別のオーダーにも真心で応え、お祝いの手紙を添えて届ける。
 餅を焼いていると「餅屋さーん」と子どもたちが手を振ってくれることがあると髙山さん。幼稚園の餅つき大会に出向いたり、正月に蒲生観光交流センターで餅つき披露をしたりする中で少しずつ、まちの餅屋として認知されてきたと話す。「やりたい仕事を家族と一緒にやれる幸せを実感します。地元蒲生でこれからもおいしいお餅を作りたい」髙山さんは今日もお客さんとのご縁に感謝し、笑顔とぬくもりを込めた餅で応える。

kouhakumoti

 棟上げでまかれる紅白餅。なかには結婚式で餅まきをしたいというオーダーもある。

rogo

家族のきずなが織りなす白くてまぁるい幸せ

 餅の原料となるひよくもち米(県の奨励品種)は農業のノウハウをもつ父の和美さんがリードして生産。加工は母 涼子さん、妻 樹里さん、妹 由美さんが主に担当する。誰が欠けてもやっていけないと語る信一郎さん。ちろす家のロゴはみんなが暮らすおうちに髙山さんがニッコリほほ笑む樹里さん手書きのイラスト。お餅大好きな三児の父。

ページの先頭へ戻る