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大地の恵みと技巧の結晶

白石昌弘

自分らしさを探求し、伝統を継承する陶芸家

 加治木のみろく交差点で「加治木陶昌窯」を営み、鹿児島伝統の白薩摩焼をはじめ、陶芸作品を制作する白石さん。「陶器や美術品を見るのが好きだった」と子どもの頃から親が経営するギャラリーで骨董品を眺め、薩摩焼などの陶器に囲まれた環境が陶芸家になったきっかけのひとつと話す。今年、48回を迎えた鹿児島陶芸展(鹿児島県、南日本新聞社主催)で出品した「薩摩切子焼 佇む」が最高賞の県知事賞を受賞。薩摩切子の彫り模様や陶器の口を波状に施したデザインなど、直線と曲線の融合をめざした作風が高い評価を受けた。


 白石さんは鹿児島市の「薩摩焼伝習生」として陶芸の基礎を学び、25歳のときに独立。自分にできることを追及し、ほかにない趣きの陶芸を模索するなか、白薩摩焼に薩摩切子の文様を施した「薩摩切子焼」の着想を得た。薩摩焼には白薩摩(白もん)と黒薩摩(黒もん)の2種類があり、白薩摩は表面に入った煌めく細かなひび(貫入)が特徴。絵や掘りなどの装飾が施されることが多く、原料の白土も限られた場所でしか取れなかったため、貴重品とされてきた。
 現在は良質な白土を独自に導きだした配合の陶土で創作。精巧な薩摩切子の柄は手作業で一つひとつ彫りあげる。焼きの工程では繊細な細工や土の状態で割れることもあり、「望んでいた姿に焼き上がったときは感動する」と陶芸の喜びと難しさを語る。
 工房では、参加者が思い思いの発想で器を制作する陶芸教室を開催。また、地域の保育所に出向き、将来の夢を描いた絵皿を卒園記念につくる体験教室を実施するなど、陶芸の楽しさを広めている。薩摩切子焼は9月から姶良市のふるさと納税の返礼品にも加わり、「鹿児島の魅力を姶良市から発信したい」と創作にも熱が入る。


 鉄道が好きな長男が趣味でつくる鉄道模型にもアドバイスをする白石さん。「つい口を挟んで言い合いになります」ものつくりの面白さを親子で共有できることがうれしいと父親の顔をのぞかせる。「陶芸家としてはまだまだ未熟。自分らしさを大切にしていきたい」と伝統を伝え、新たな可能性を創造する飽くなき探究心は尽きない。

陶芸教室

 陶芸教室で参加者に指導する白石さん。自由な発想で陶芸を楽しんでほしいと開催している。

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