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心に響く曲を追い求めて

伊地知元子

喜んでくれる人のために旋律を紡ぐ作曲家

 東京藝術大学大学院作曲科を経て、交響曲やミュージカルなどの作曲、楽器や演奏形態に合わせて曲を改編する編曲に携わる伊地知さん。平成27年に開校した松原なぎさ小学校の校歌の作曲や今年開催予定だった「かごしま国体」の式典音楽の制作にも参加。作曲家として高い評価を受けている。


 伊地知さんは4歳のときからピアノを習いはじめ、中学生までピアノ教室に通う。毎日のように練習に明け暮れるなかで、このままピアノだけを続けていくことに疑問を抱くようになった。そんなとき、作曲専攻出身の音楽教諭に出会い、自由に音楽の世界を表現する演奏に感銘を受ける。本格的に作曲家を志すきっかけとなった。大学入試では西洋音楽の理論や作曲に関する実技など、6時間を超える試験があり、集中力と体力を身につけるために昼夜を問わず模擬試験を繰り返したという。楽譜やピアノに長時間向き合う作曲家の基礎を培ったと当時を懐かしむ。
 卒業後は、さまざまなジャンルの作曲や編曲の仕事に就き、国際的な作曲コンクールなどでも入賞を収めた。夫の仕事の関係で移住した奄美大島では、古仁屋高等学校(瀬戸内町)の非常勤講師として音楽を指導。地元に根づく島の歌を編曲し、演奏する吹奏楽部の活動が評価され、音楽教育振興賞(毎日新聞社、音楽教育振興財団主催)を受賞した。現在は松陽高等学校音楽科の生徒に教えている。


 伊地知さんが副理事長を務めるNPO法人鹿児島作曲協会では、小・中・高等学校や特別支援学校の児童や生徒を対象に作曲コンクールを開催。毎年300点を超える作品が寄せられ、子どもの自己表現力を育み、文化芸術の振興に尽力する。また、自宅で音楽系の大学をめざす若者にオーケストラの譜面全体を理解するスコアリーディングや和音の規則を学ぶ和声学など、専門的な音楽の知識を教え、次世代の育成にも力を注ぐ。
 「社会とのつながりや人を愛することも大事」と思いやりや支え合う心が豊かな音楽を生むと感じている伊地知さん。音楽を愛する子どもたちの将来が、輝かしい未来になるように寄り添っていきたいと今日も譜面に向かい、ピアノを奏でる。

レッスン

 音大をめざす県内の高校生が専門的な技術や知識を学ぶために伊地知さんのもとを訪れる。

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