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人の思いをつなぐ架け橋になる

20230718airajin

手が結ぶコミュニケーションの輪を広げたい

 耳が聞こえる人も聞こえない人も、同じように生活を送れるようにするために、私に何かできることはないか——。
その思いを胸に「手話」で人と人の心をつなぐ濵川千鶴子さん。手話講師、そして手話通訳者として県内各地で活躍している。
 濵川さんは大学時代に友人に誘われて参加したボランティアサークルではじめて手話と出会った。手話で自己紹介もできない状態で耳が聞こえない人たちと関わり「音のない世界」でのコミュニケーションの壁の厚さに衝撃を受けた。「私には難しいかも」と手話とは距離を置いていたが、それから数か月後、また友人の誘いを受けて今度は手話講習会に参加。耳が聞こえない人が受けてきた差別や普段の生活の中での困りごとについて触れた。聞こえないことで職場では誰からも話しかけられず、孤独を感じながら過ごしたという話を聞いた。「少しコミュニケーションが取れなかっただけで遠ざかってしまった自分が恥ずかしくなりました。きっと私にも何かできることがあるはず」と手話への想いが芽吹いた瞬間だったと振り返る。同時に手話通訳士の担い手不足という実情も目の当たりにし、手話の道を本格的に歩みはじめた。

広報あいら245姶良人

 手話講習会はもちろん、積極的に聞こえない人と手話を使って通じ合う経験を多く重ねた。聴覚の違いを超えて思いや喜びを共有できる手話という〝言語〟を知れば知るほど惹かれていった。
 二十数年の勉強と経験を積み、サークル役員や手話講習会の講師としても手話の普及に奮励する毎日。所属する手話サークル「かりん」では、ろう者と聴者が手話により心を通わしている。聞こえる、聞こえないに関わらず、一緒に楽しく学ぼうとする濱川さんの姿勢にメンバーの笑顔も絶えない。手話でのコミュニケーションのほか、ろう者と聴者の文化の違いからくる誤解や偏見などについて学ぶ場をめざす。お互いの関わり方を学び、ろう者への理解を深める啓発活動を行う団体でもあり、サークルは活動の幅も広いと語る。サークルのメンバーと共に署名活動や「かごしま県民手話言語条例」という、ろう者を理解するための施策の普及にも寄与している。
 「活動を通して成長していく人たちの姿を見られるのが嬉しいです」と笑みをこぼす濵川さん。だれもが孤立することなく、明るくコミュニケーションをとることができる社会をめざして、今日も奮闘する。

20230718姶良人

手話サークル「かりん」で、交流しながら楽しく手話を学んでいる様子。

 手話で談笑する時間はサークル参加者の大きな楽しみのひとつ。

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