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魅了するマジックに笑顔のタネ

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指先から広がる不思議の世界

 県内の高校で36年間にわたり英語教師を務め、現在は塾の講師として子どもたちに学ぶ楽しさを伝える松下春義さん。「語学の基本は相手を理解しようとする心です」と教鞭をとる中で貫いてきた自らのコンセプトを話す。語学に関する研究心が強く、独学でロシア語の習得に励んでいる。
 学問に向き合う姿が凛々しく教育者としての信念を強く持つ松下さんには、実はもうひとつの顔がある。「3、2、1」とカウントダウンの声のあと、どこから現われたか両の手から鮮やかなハンカチが出たり、指にはめていたはずの裁縫用の指ぬき(キャップのようなもの)が消えたり――。そう、松下さんは63年のキャリアを持つマジシャンなのだ。
 大学1年の夏休み、たまたま通りかかったおもちゃ売り場で見かけたプロのマジシャン。ふわりと舞った赤いハンカチが一瞬で緑に変わり衝撃が走った。「タネを見破ろうと1週間はマジシャンのもとに通い続けましたよ」と子どもたちに混じりながら、見れば見るほどマジックの魅力にのめり込んでいった。松下さんはそれから今も1日と欠かすことなくマジックの練習を積み重ねている。「テーブルの向こう側にいる観客の驚く顔、楽しむ笑顔を見たときの快感が忘れられない」と初めて披露したときのことを鮮明に覚えているという。
 磨いた技はこれまで多くの人を釘付けにし夢中にしてきた。本職である教育の場で活かされることもあり、生徒たちに新鮮な驚きを与え、やる気を引き出してきた。「カードをシャッフルするリズム。次の瞬間に向ける想像力。タネはなんなのかという探求心など学びの姿勢にも面白い反応を与えてくれます」とマジックの力を語る。
 毎年、夏休みに椋鳩十作品「マヤの一生」にちなんで市内で開催されるマヤフェスタ。音楽や文学、芸能などのプログラムが企画され、松下さんもこれまでに7回ステージに立ち子どもたちにマジックを披露してきた。「また機会があれば観客を楽しませたい」と心意気も十分。御年82歳のエンターテイナーは多彩な技を磨き続けている。

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 23年前に定年退職を迎えた後、単身オーストラリアに渡り約5か月ボランティアで日本語教師も務めた。もちろん国境の向こう側でもマジックを披露し、学校外でも引っ張りだこだったという。現在は25人が通う塾の講師。生徒にはときにマジックのタネもこっそり教えるのだという。

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 毎年夏休み最初の土曜日に開催される「マヤフェスタ」。加音オーケストラの演奏や朗読会をはじめ様々なプログラムに多くの子どもが集まる。松下さんのマジックも子どもたちに大人気。今年は時期をずらしての開催を検討中。

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